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【令和8年版観光白書】データでみる宿泊業の「現在地」と「次の一手」

2026年7月10日、政府は「令和8年版観光白書」を閣議決定した。2025年の訪日客消費額は9.5兆円、日本人国内消費額は26.8兆円と過去最高を更新。一方でテーマ章では宿泊業の「人手不足」と「生産性の低さ」を直視し、OFF-JT(研修)の不実施率が35.1%と全産業平均を大きく上回る課題を露呈した。対策として、国際観光旅客税の3,000円への増額に伴う1,300億円の予算を原資に、DMO間での繁閑人材シェアや観光DX、オーバーツーリズム対策への強力な支援を明記した。

~「国土交通省 観光庁」より引用


みなさま ごきげんよう!福山ですᝰ✍︎

梅雨明けが南からはじまり、先週は関東でも夏の兆しを感じる日々がつづきました。身体の調子を「夏モード」へ徐々に変えていかないといけないですね…体調には十分お気をつけください。

今回の記事は、3月30日の業界ニュースでも取り上げた「第5次 観光立国推進基本計画」のつづきです。「働いてよし!」の具体策、やはり「地域」がカギになるようです、


●オペレーターがこの記事から得られるヒント

  1. 「教育・研修」を自社の武器にして離職率を下げる
    白書で「宿泊業は計画的な教育ができていない」と指摘されたということは、逆にここを強化すれば他社と圧倒的な差別化ができるということ。黒川温泉の事例のように、自社だけでなく地域の宿と組んで合同研修を行うなど、「人が育つ宿」としてのブランドを作る。
  2. 国際観光旅客税の「補助金メニュー」を使い倒す
    1,300億円に増額された税金は、地域のコンテンツ造成(612億円)や、観光DX・オーバーツーリズム対策(596億円)に直に使われている。自動チェックイン機やスマートゴミ箱の導入、さらには先週の業界ニュースで掲載した「廃屋撤去」まで、すべてこの税金が原資。自社や地域が使える補助金がないか、DMOや観光庁HPを通じて即座にチェック!※X(旧Twitter)フォローおすすめです
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・物価上昇を考慮しても、国内消費額は上がっている?

2025年の日本人国内旅行消費額は26.8兆円で、前年比6.5%増。物価上昇率(3.1%)の影響で「旅費が高くなったから総額が上がった」という側面はあるけれど、伸び率(6.5%)の方が物価上昇(3.1%)より高い。つまり、物価高を差し引いても、日本人が国内旅行で使うお金の「リアルなボリューム」は確実に増えている。

・奈良・福井・北海道の「繁閑人材シェアリング」の裏側

仕組み: リゾート地は季節によって忙しさが真逆になる(季節性)。

  • 北海道: 夏(観光)と冬(スキー)が超多忙、春秋が暇。
  • 福井(越前): 冬(カニシーズン)が超多忙、夏が比較的穏やか。
  • 奈良: 春・秋(修学旅行・紅葉)が超多忙、夏・冬が閑散期。

関係値: 都道府県DMO(奈良県ビジターズビューローなど)がハブになり、「うちの暇な時期に、そっちの忙しい現場へスタッフを出向させます」という契約を結んだ。

メリット: 宿側は「即戦力のプロ」を繁忙期だけ確保でき、スタッフ側は年間通じて雇用が安定し、他所の高度なサービスを学べる。まさに「働いてよし」の最先端モデル!

・白書の事例はどうやって観光庁が把握するの?

  • 国の補助金(実証事業)に採択されたプロジェクトの報告書(奈良の事例など)
  • 地方運輸局(観光庁の出先機関)の職員が「うちの地域にすごい取り組みがある」と推薦した事例
  • 有名大賞(ワークスタイル変革大賞など)の受賞実績(川六のルートだね)

・国際観光旅客税(出国税)1,300億円の使い道

使途カテゴリ予算規模具体的な実例
観光DX・混雑対策(快適性の向上)596億円・ホテルの自動チェックイン機や自動精算機の導入補助金
・観光地のスマートゴミ箱の設置、AIカメラによる混雑予測アプリ開発
・空港の税関・出入国審査のスマートレーン(顔認証化)の整備費
地域資源の開発(滞在の質の向上)612億円・国立公園の高級グランピングトレイル整備
国立公園オフィシャルパートナー
・文化財(お寺や城)の夜間特別ライトアップやユニバーサルデザイン化への補助
訪日プロモーション(情報入手の容易化)92億円・JNTO(日本政府観光局)による、欧米豪の高付加価値旅行者(富裕層)向けSNS・動画マーケティングの実施

・「国際観光旅客税」の世界事情

1. 世界の「出国税(Departure Tax)」

日本の国際観光旅客税と全く同じで、「その国から出る飛行機や船に乗るときに、航空券代に自動で上乗せされる税金」。多くの国が観光インフラの整備や環境保護の財源にしている。

  • オーストラリア:旅客移動料金(PMC / Passenger Movement Charge)
    • 金額: 約70豪ドル(約6,700円)
    • 特徴: 日本の3,000円の倍以上!オーストラリアの厳しい生態系を守るための検疫や、出入国管理のハイテク化(顔認証システムなど)の費用に直結している。
  • タイ:国際旅客出国税
    • 金額: 700バーツ(約3,000円)→ 2026年6月より 1,120バーツ(約5,500円)
    • 特徴: 空港の利便性向上や観光地の維持に使われている。タイに行くときの航空券の「諸税」の欄をよく見ると、しっかり引かれているのがわかる。

2. 入国時にまとめて取る「入域税・観光税」

出る時ではなく、「その国や都市に入るときに一律で徴収する税金」も、使い道は日本の旅客税とそっくり。

  • インドネシア(バリ島):外国人観光客税(Tourism Tax)
    • 金額: 150,000ルピア(約1,400円)
    • 特徴: バリ島の豊かな自然環境やヒンドゥー文化を守るため、2024年から導入された新しい税金。到着した空港や専用アプリで支払う仕組み。
  • イタリア(ベネチア):入域料(Access Fee)
    • 金額:5ユーロ/10ユーロ(約900円/約1800円)
    • 特徴: 日帰り観光客に対して特定のハイシーズンに「入場料」として課税する仕組み。世界遺産の街をオーバーツーリズムから守るための防衛策。

3. 航空券に乗っかる「施設利用料」

これは「税金」ではないけれど、ゲストの財布から航空券と一緒に自動で引き落とされる仕組みとして、ホテルオペレーターも知っておくべき「PSFC(旅客取扱施設利用料)」というのがある。

  • 中身: 羽田や成田、関西国際空港などを利用するときに、数百円〜数千円が航空券代に上乗せされている館内利用料。
  • 使い道: 空港ビルのロビーの清掃、無料Wi-Fiの維持、動く歩道の整備など、まさに「ゲストが快適に過ごすための空間維持」に使われている。

国内の旅行消費額が過去最高だったのは喜べますが、宿泊業の年間休日が少なかったり労働生産性も全産業の7割にとどまっていたり…旅行をはじめとする「観光」を支えている人の「働く」に関しては、まだまだ厳しい現実が続いているなと率直にかんじました。
今回の白書で掲載された「黒川温泉の地域一体での人材育成」や「奈良・福井・北海道の繁閑人材シェア」といった具体的な事例をみると、やはり施設単体でどうにかするのではなく(大手企業であれば)グループ内での循環、加えて他地域を巻き込んだ連携をより進めていくことが、必要なのだとかんがえます。
政府も1,300億円という莫大な旅客税を原資とした予算を使って、実直に現場のDXや高付加価値化をバックアップしようとしているのは理解できます。なので、私たちオペレーターはこの国の動き(予算)を賢く使って、現場の環境を自分たちの手でも「働いてよし!」に変えていきたいですね!

まだまだ知らないなんとか税があったり、その税がどう使われるのか気にしていなかったり…観光業はむずかしいなとあらためて。すこしでもこのまとめが役立つことを祈ってます+*

執筆者
福山 千尋 (ふくやま ちひろ)

コーディネーター